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近年、ストレッチに関する研究が多様化するにつれて、ストレッチの弊害がクローズアップされるようになりました。
その最たるものが「運動前のストレッチ不要論」です。
運動前のストレッチの必要性
そもそもこの「運動前のストレッチ不要論」は以下の内容が背景にあります。
- 長時間ストレッチを行うと、筋出力が低下してしまう。
- 長時間ストレッチを行うと、副交感神経が優位になり、筋肉がリラックス状態に陥ってしまう。
- 長時間ストレッチを行うと、体温が下がる(冷える)。
ストレッチによるこれらの反応は、確かに運動直前期には不適切な体の状態です。
したがって、一見すると「運動前のストレッチ不要論」は正しいように見えてきます。
しかし、もう一歩踏み込んでみると違和感を感じるようになります。
クレアチアのザグレブ大学の研究チームの実験では
- 「45秒以上」の静的ストレッチにより、筋力は平均5.5%低下し、跳躍力や瞬発力も平均3%低下した
- 静的ストレッチを「90秒以上」行うと、さらに顕著な筋力低下が見られた
としています。
またDuongら(2001)は
足首に対する「20分間」のストレッチング→20分間の休息→再び「20分間」のストレッチングを実施した結果、足首のトルクが急激に低下したことを報告しています。
他にはなんと「60分間のストレッチキープ」後の筋力低下を報告している研究も存在しています。
運動直前のストレッチにおいて「1箇所当たり45秒以上キープし続ける」ことってありますか?
ましてや「20分間のキープ」なんて…ありえないですよね?
ストレッチングに関する学術的な研究は、このように”極論”に走ってしまっているケースが多々見受けられます。
前述したような弊害が起こる可能性は確かにありますが、目に見える筋力低下を引き起こすためには非常に長いストレッチ時間を耐える必要が出てきます。
この事実をきちんと把握しておくことが大切です。
*ちなみに「20分間のストレッチ」をしていたDuongら(2001)の研究では、ストレッチポジションから解放後の最初の2分間で、43%のトルクが回復したことを報告しています。
つまり、ストレッチによって仮に筋出力が低下したとしても、10分後にはほとんど元に戻っているのが現実であるわけです。
ウォームアップとストレッチは別のもの
「運動前のストレッチ不要論」を唱える人の多くは、ウォームアップとストレッチを混合して認識している場合が多いです。
「ウォームアップ」は、ジョギングや体操などの体を温める行為の総称です。
目的としては
- 神経システムの活性化
- 組織の弾性力UP
- 体温の上昇
などが挙げられます。
一方で「ストレッチ」は、1つ1つの筋肉を伸ばす行為の総称です。
目的は
- 柔軟性の向上
- 関節の可動域UP
- 粘度の低下→動作抵抗Down
などが挙げられます。
このウォームアップとストレッチは、両方取り入れることで初めて効果が発揮されます。
股関節の自動可動域を研究したde Weijerら(2003)によると、
- ウォームアップとストレッチを両方行う=14度増加
- ウォームアップだけ行う=1度増加
したことが報告されています。
ウォームアップとストレッチを組み合わせることで初めて関節可動域は広がり、
- 障害の予防
- パフォーマンスアップ
につながることをぜひ覚えておいてください。
どんなストレッチをすべきか
ウォームアップで体を温めた後は、なるべく体を冷やさずに本運動へ移る必要があります。
したがって長時間のスタティックストレッチはオススメできません。
基本となるのは、
- 1ポジションあたり、最大でも15〜20秒程度
- ストレッチ全体の時間は、最大でも10分程度
が目安になります。
全身の主要筋肉を「静的ストレッチ」で伸ばした後は「動的ストレッチ」で筋肉に刺激を入れていきます。
運動直前に筋肉に対して強い「伸張ストレス」を与えると、筋出力は高まるといわれています。
季節(外気温)や運動の強度にもよりますが、
- ウォームアップ
- 全身の主要筋肉への静的ストレッチ
- 運動動作に関連した動的ストレッチ
の3ステップを行うことが運動前の基本的な準備になります。
まとめ
運動前のストレッチは、怪我予防・パフォーマンスアップのためにも原則実施すべきです。
わずかな筋出力の低下や体温の低下は起こるかもしれませんが「伸ばしすぎる」ことがなければ、大きな問題にはなりません。
”極論”に振り回されず、きちんとストレッチを取り入れていきましょう。
具体的なストレッチ内容に関しては【イラストでわかるストレッチングマニュアル】を参考にしてみてください。
ではでは今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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